十二国記

古代中国情緒あふれる懐の深いファンタジーアニメ

アニメ『十二国記』ファンタジー
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おすすめ度3

大人満足度5

★はあくまで筆者の主観。大人満足度は大人向けの内容という意味ではなく大人が楽しめるかどうか。

制作年:2002年

原作は熱烈なファンを持つ人気の小説らしい。新潮社のサイトによると、2021年9月現在でシリーズ累計発行部数は1280万部を超えるという。アニメの制作は2002年と古く、近年のアニメと比べれば見劣りする部分があるのは否めない。そのためおすすめ度はあまり高くはできない。(それだけ近年のアニメの進歩が著しいということでもある。)しかし、作り込まれた世界観やストーリーは素晴らしく、大人満足度は高い。

見どころ:よく練られた世界観。悠久を感じさせる中華ファンタジー。

いにしえの中国風の美しいビジュアルが素晴らしい。添えられた音楽も情感たっぷりである。ちなみに、オープニング曲の一部が映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』のものに似ており、パクリ疑惑があるくらいだが、制作は『十二国記』の方が先である。よってパクられることはあってもパクることはあり得ない。

主人公が様々な経験を通じて成長する物語だが、政治的な駆け引きや謀略なども面白い。ファンタジーだったことを忘れるくらい見応えがある。荒唐無稽のようでいてその実、国政と地方自治の政治形態や官僚機構などに、緻密な設定が与えられていればこそであろう。

古き良き冒険活劇の側面もある。例えば、王たる者が身分隠し、義賊らに混ざって悪漢と戦う。だが絶体絶命、すっかり舞台も温まったのところで身分を明かさば、敵も味方もおののき平伏しちゃうというもう完全に水戸黄門的カタルシス。いや、「全てお見通しだ」という点で遠山の金さん的でもある。このシーンを何度も見返し、その度に拍手喝采するのだ。

ロマンだ。おじさん世代にはたまらんよ。

設定:ファンタジーを超えたリアリティを感じさせ、作中に引き込まれる。

最近の異世界アニメだと、主人公は常識のまったく通じない世界に放り込まれながらも、なぜか言葉は通じるし、おまけに状況も素早く理解できるし、おかげでストーリーの進行が捗る。これはこれでテンポが良くて面白いのだが、不自然ではある。

本作ではこの言葉の問題をおざなりにしていないし、登場人物たちのみならず我々視聴者も、置かれた状況を簡単には理解できない。そのため異世界に適応するのにずいぶんと時間を要してしまう。このまどろっこしさが本作のリアリティである。

『十二国記』における王様は、麒麟という神聖で特別な者から、唯一の存在として選ばれる。とてもドラマチックに描かれるシーンだ。だがいざ王として活動し始めると、王の存在も法の下では統治機構の一部でしかなく、また官僚が強い権限を持っていたりして、正義を行使したくとも困難を極める。

ちなみに官僚制度も事細かに設定されている。戦のやり方なども面白い。原作者は中国古典に精通しているらしく、非常に情報量の多いアニメである。

良く考えられた設定、情報量の多さ、大人を満足させる希有なアニメだ。

ストーリー:様々な経験をする。それはひとえに人格者になるため。

経験が人を成長させる。それがこの物語のメインテーマである。近年では数少ない骨太な内容のアニメといえる。時々見せる漢文調の台詞が物語に重厚さを与えている。

したがって、分かりやすい目的、たとえば悪者を倒すとか、誰かを助けるとか、などは主題ではない。また、最近のファンタジーのように、アイテム入手やステータス上げのようなイベントもない。ここを見誤ると、不思議の国のアリスのように訳わかんないことに次々巻き込まれるだけのお話しに思えてしまう。登場人物たちの関係性や背景などかなり複雑だが、出来事よりも主人公や周囲の人たちの心情を追っていくべきだ

とはいえ、古き良き勧善懲悪ものでもある。悪人を懲らしめるシンプルな痛快さもまた本作の魅力の一つだ。

主人公と共に異世界に順応していこう。だんだん面白くなってくる。そんなアニメだ。

苦言:活字じゃなきゃわからん

原作が中華ファンタジー小説だから当然だろうが、人名、地名、官職名、その他一般名詞にやたらと漢字が多い。活字で読めば何てことないと思われるが、視聴中に突然「かいきゃく」とか「たいほ」とか言われてあなたは意味が分かるだろうか。14話目にしてまとめ回のようなものがあり、初めて漢字を教えてもらえる(笑)

特に陰謀を暴いていく下りはかなり分かりにくい。一度の視聴の音声だけで登場人物らの関係性を頭の中に想い描くのは難しい。よく分からなくとも活劇として単純に楽しめるが、どうしても気になったときは、いったん視聴を中断しサクッとググってしまえ。なにせ原作はベストセラーなのだ。「十二国記 用語」「十二国記 アニメ 登場人物」などのワードで検索すれば情報は山ほど転がっている。

単純に楽しんでも良し。深く掘り下げてもよし。それがこのアニメの懐の深さだ。

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