おすすめ度:5
大人満足度:5
★はあくまで筆者の主観。大人満足度は大人向けの内容という意味ではなく大人が楽しめるかどうか。
制作年:2014年 〜 2021年
『シドニアの騎士』はこのブログサイトを始めるキッカケになったアニメだ。こんなに面白いSFアニメなのに、認知度が低いうえに褒める人が少なくないか? 有名なオタクである岡田斗司夫氏は、たった1話見ただけで「こういうの、もういい」などと的外れなコメントをしている。その昔、私に『攻殻機動隊』の魅力を語ってくれた友人、マンガやアニメで話の合う唯一の存在だが、『シドニアの騎士』については聞いたことすらないという。Googleで検索してみても候補キーワードに「アニメ ひどい」などと表示されてる。いやいや待て待て。
不当にプレゼンスが低いではないか。このままではこの素晴らしい創造性や技術が廃れてしまい、私好みのアニメが減ってゆくのではと危惧したのだ。「みんなもっとこのアニメ見てくれ!」そんな願いを込めて及ばずながらこのブログサイトを立ち上げた次第だ。
【朗報】経済評論家の上念司氏は激褒めしてたよ。
見どころ:SFアニメの白眉。CGならではの映像が極上。
まずメカの造形が美しい。光の当て方、影の付け方も巧みだ。だけでなく、動きもすごくいい。戦争するSFだから、何と言っても出撃シーンがそそる。そしてアフターバーナー的なものをボフッとふかす瞬間とか、推進剤的な何かがキラキラと飛び散る様とか、その時に画面がブルッと揺れる迫力の演出とか、機関砲を撃ったときの薬莢が回転しながら四方八方に飛び散る描写とか、挙げるときりがないほどだ。SF好きならもうこれだけで丼飯3杯はいける。保証する。
メカだけではないのだ。表示系もすこぶるカッコイイ。コックピット、司令室、パイロットの待機所などにある機器の、ユーザーインターフェース(UI)のデザインもまたSF好きの心をくすぐる。
UIに用いられる文字列は英語ではなくことごとく日本語で、そのフォントデザインがこれまたカッコイイ。だけでなく、一貫性があってフォントとして成立している。気になって調べてみたら、原作者の弐瓶勉氏の原案・監修のもと、老舗フォントメーカーの(株)イワタにより本物のフォントとして開発され、しかも「東亜重工製フォント」として販売までされているのだ!
第1話のほんのさわり。劇場版ではさらにCGが進化しとる。
SF好きの諸兄よ、アニメの進歩を刮目して見よ。
設定:ロボットアニメである。
ロボットアニメと聞いて、少しがっかりしたあなたへ。
このアニメでは、人型ロボットを兵器にして戦争をする。「なんだよロボットアニメかよ」と侮ることなかれ。ロボットを用いることに合理性を感じ取れるので、うまい設定だなと思えるのだ。
この物語の登場人物は全て、我々日本人の末裔である。謎の生命体に地球を破壊され、宇宙船(劇中では播種船と呼ぶ。ノアの方舟のようなものかな。)に乗って逃れてきた。当然、資源は極めて限られている。戦闘も、船体修理も、資源採掘も、船外作業の全てをこなせる機体となると、人型ロボットの形状に行き着いても不思議ではない。実際そういうシーンも描かれている。主人公の最初の任務は小惑星における資源採掘だ。(結局、不慮の敵遭遇により戦闘になるが。)
また、ロボットをキャラ化して打ち出しているわけではないので、種類も少ない。基本、新型と旧型しか登場しない。しかもそれら違いは、色以外ではよーく見ないと分からない、ガンダムとジムほどの違いもない。F-16とF-2の違い、そんな感じ。
劇場版でさらに新型が登場したが、ストーリーの展開上必要だっただけで、存在感はさほどでもない。お子様向け要素は皆無なので、SF好きの諸兄よ、安心して見てくれ。
もう一つの重要な設定。播種船(はしゅせん)という舞台装置。
地球を破壊され、人類の種を絶やさぬために宇宙へと漕ぎ出し、かれこれ千年くらい旅しているらしい。想像を絶する状況だが、その乗り物となっている播種船に、作り手の強い個性と創造性の発露が見て取れて面白い。
まず外観。まったく宇宙船らしくはないのだ。地球を脱出して増築を繰り返しながら航行してきたのだろうか。小惑星に角柱をぶっ刺したような形状をしている。また、クレーターだらけの表面はその巨大さとともに、長く旅してきたことが瞬時に理解できる。
そして内部。無秩序に上へ上へと伸びる都市。複雑に立体的にからむ通路や階段、至る所にはびこる配管。戦争状態を続けてきたことと相まって醸し出される圧迫感、閉塞感、黄昏感が、いい味出してる。戦闘に関わる場所はこれでもかと未来的に描かれているのに、居住空間は所々に昭和的な生活感をにじませている。狭苦しさの中にある安心感のようなものが、このアニメ全体を覆う独特な雰囲気になっている。
宇宙で流浪の民として生き抜くとはどういうことか。真剣に考え抜いた設定でしょうな。
他にもSFらしい仕掛けがたくさん
クローン人間がいたり、エネルギー節減のために人間が光合成できるよう改良されていたり、人工生命的の兵器が活躍したり、などなど他にもSFらしい設定が盛りだくさん。お子様向けアニメにありがちな物理現象を豪快に無視するような表現もないし、細部に至るまでよく考えられた非常に情報量の多いアニメである。
ストーリー:主人公=図抜けた能力のエースパイロットが活躍する物語
といってもアムロくんのようにニュータイプとかではない。ネタバレになるので詳しくは述べないが、主人公は生まれながらに才能を約束されており、しかも幼児の頃からシミュレーター(作中では「仮象訓練装置」と呼ぶ)であらゆる状況を想定して徹底的に鍛え上げてきた。ので強い。
このアニメの主軸は戦争である。胸くそ悪い陰謀なども少しはあるが、基本的には、敵の存在、戦局、それを打開する新兵器、そして戦闘。それらを描く形で展開してゆく。よって、わりと分かりやすいストーリーで、謎をいつまでも引っ張り続けるような面倒臭さはない。緊迫感あふれる戦闘シーン(だいたい背水の陣)と主人公の活躍を純粋に楽しめる構成だ。
巨大な敵を破壊するシーンは、スターウォーズ1作目、Xウイング・スターファイターでデススターを沈める戦闘を彷彿とさせる。たまらんぜ。
ちなみに風刺も効いている。平和ぼけ日本人の末裔たちが「武器を捨てれば敵は襲ってこない」という主張を繰り返すのだが、さてその命運や如何に。
主人公やたらとモテてラブコメ的な茶番もあるが、戦争ばっかりだと見る方も疲れるので、この程度は許容範囲とする。ラブコメにもSF的設定が絡んでくるので、意外に面白い。
この声優を見よ
冷徹かつ有能で孤高の指導者である小林艦長。大原さやかさんが好演している。
気っぷのいい姉御肌の整備士兼開発主任の佐々木。演じるのは本田貴子さん。はまり役だ。
操縦士リーダー役の田中敦子さん。攻殻機動隊の少佐役、持ち前のその声で「私に続け!」に震える。現場指揮はこの人しかいない。部下になりたい🫡。
整備士のおやっさん役は1930年生まれの阪脩(さか おさむ)さんで本当におやっさん(私の父親よりご年配)だ。攻殻機動隊の公安9課のボス・荒巻大輔の声優さんである。べらんめい口調に渋さとコミカルが同居している。なくてはならない役どころだ。
どこにでも出てくる(笑)安定の声優、子安武人さん、櫻井孝宏さんもご出演。私の好きな能登麻美子さんは個性を発揮できる役じゃなかったのがちょっと残念。
以上はあくまで私の好み。主要な役どころは若手さんが大活躍👏
YouTubeで1話目全編公開中
『シドニアの騎士』を見ないなんてありえない。人生の損失。
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