おすすめ度:5
大人満足度:5
★はあくまで筆者の主観。大人満足度は大人向けの内容という意味ではなく大人が楽しめるかどうか。
制作年:2012年 〜 2021年
このアニメを避けていた。人生損してたよ。
50歳を過ぎてからアニメにハマった私だが、当初はかなり偏見を持っていて、こういったアニメだけは見るまいと思っていた。なにせ極端に短いスカートの女子高生が、戦車を乗り回しているのだ。なんと気色の悪いことだろう。いかにもオタクが好みそうな絵面だ。
ところが、たまたま見たYouTubeの番組で元自衛官の女性が言うには、『ガールズ&パンツァー』を見たのがキッカケで入隊を決めたという。本当ならかなり大きな決断を促したことになる。それほど人に影響を与えるアニメなのか? ちょっぴり興味が湧いてきて、冷やかし半分で見始めたら、これがめちゃくちゃ面白かったのだ。
要するに食わず嫌いだった…
見どころ:3次元CGを駆使した圧巻の戦車戦!
とにかく戦車だ。圧倒的に戦車だ。第二次大戦までに使われてた様々な戦車がキビキビと動き回る。実写では絶対無理。これこそアニメにしかできない映像だ。大砲の発射音や、砲弾を弾き返す音など、音響の臨場感も素晴らしい。細部まで手抜かりなく作り込まれている。
表現力だけが秀でているわけではない。戦車の特性、地の利、状況などを考慮した戦術や戦車の使い方など「そうきたか!」と思わず膝を打つアイデアを数々披露してくれる。
それはシリーズの回が進むにつれ磨きがかかってゆき、見る者を飽きさせない。
戦車に詳しくなくとも存分に楽しめるぞ
↓こんな具合である。
設定:女子高生と戦車…ミスマッチと思いきや実は理にかなってた?
このアニメの制作者は戦車が大好きだ。戦車そのものだけでなく、開発された背景とか、戦歴とか、運用方法とか、欠点とか、逸話の類とか、そういった知識を総動員しつつ妄想の中でとことん戦車を戦わせたい。とはいえ戦争の悲惨さを描きたいわけではない。妙な言い回しになるが、平和裏に戦闘を行う必要があるのだ。そこで妄想ついでに無茶な設定が生まれた。(※全部想像)
戦車道は乙女のたしなみ!
引用元 girls-und-panzer.jp
戦車を使った武道「戦車道」が華道や茶道と並んで
大和撫子のたしなみとされている世界。
とは公式サイトの記載だ。かくして条件が整った。女子のクラブ活動として戦車戦をやればいいのだ。スポーツ化した武術もしくは兵法。すなわち「戦車道」なのだ。ただし戦闘シーンは「いやそれ絶対死人出るだろ!」とツッコミ入れたくなるほど激しく、それゆえ見どころ満載だ。
殺し合いではなく競技として、面白おかしく戦車戦を描くための設定だな
登場人物が男子だったらどうなっていたか。少年ジャンプ的バトル漫画よろしく、いかにもオレは強いぜオーラやらエピソードやらを勝負前にキッチリ描写する必要があるし、まずはハッタリかましてマウント取ってみてと面倒くさく、本筋とは関係ないところにカロリーを使って肝心の戦車戦はしょぼくなっていた。しかも「うぉ!!!」とか「おりゃぁ!!!」など絶叫と根性で勝負を決する脳筋スタイルに始終し、本作のようなスピード感ある展開や知略の出る幕はなかった。やっぱり女子でよかったのだ。
ストーリー:わりとスポ根
主人公が通う高校は戦車道としては弱小校だ。居並ぶ強豪校に対し、装備の劣悪さにより最初から大きなハンデを背負い、よって必ずピンチに追い込まれてしまう。しかし、それを切り抜ける卓抜なアイデア、チームワーク、瞬時の判断力を発揮し、ギリギリのところで突破する。
潤沢なリソースのない弱者が勝ち進むのは『アパッチ野球軍』以来の変わらぬ痛快さだよ
というと泥臭いようだが、正反対で、昔の戦争映画の行進曲を可愛くアレンジした感じの曲にのせ、女の子がわーきゃー騒いだり相談しながら、しかし豪快に戦車をぶん回し、激しく大砲をぶっ放し、住宅街に乗り込んで建物を巻き添えにしぶっ壊したりする。ほのぼのしつつ痛快なのである。
キャラクター:各校の超絶わかりやすいキャラ設定が愉快すぎる
主人公の所属する大洗女子学園の戦車は各国製の混成チームだが、戦う相手校にはステレオタイプな個性付けがなされていて面白い。ざっとこんな具合。
大洗女子学園 (混成) | Ⅳ号戦車 | 主人公率いる弱小校。学校にではなく個々のチームにクセ強めの個性が割り振られていてる。 |
聖グロリアーナ女学院 (イギリス) | マチルダⅡ | 戦車の中でも紅茶飲んでる隊長。どんな状況でも落ち着き払って格言っぽいことを言いたがる。 |
サンダース大学付属高校 (アメリカ) | M4シャーマン | お金持ちで装備が贅沢。隊長がフェアで明るく気前よくフレンドリーでお節介なヤンキー。 |
アンツィオ高校 (イタリア) | CV33快速戦車 | 小型戦車ばかりで装備は貧弱なのに、食事は贅沢でこだわりが強く、宴会大好きな愛すべきおバカ。 |
プラウダ高校 (旧ソ連) | T-34 | 雪中戦に強い。フルシチョフを揶揄してか隊長はちっちゃくて独善的で口も悪いけどいいヤツ。 |
黒森峰女学園 (旧ドイツ) | ティーガーⅡ | やっぱり戦車といえばドイツだ。外連味なく淡々と強い。戦車道一筋に統率が取れてる。 |
BC自由学園 (フランス) | ルノーFT | お貴族さま出身の守旧派と、平民出身の大衆との間に軋轢があり、革命が起きそう。 |
知波単学園 (旧日本) | 九七式中戦車 | 戦況に関わらずむやみに突撃するので弱い。が、突撃を封印した密林の夜戦で強さを発揮する。 |
継続高校 (フィンランド) | BT-42突撃砲 | 謎。最終章第4話の公開が待たれる。隊長ミカの声優は私の大好きな能登麻美子さん😍期待したい。 |
個性豊かな登場人物達が、歴史や戦史をネタにした漫才みたいに掛け合いながら話は進む。それでとにかく面白いのだが、ちょっと通好みすぎて理解できない場合もあって気になってしまい、再生を止めてGoogle検索したことが幾度となくある。とにかく情報量の多いアニメである。情報量が多いのは制作者の知識の豊富さや教養の表れであり、ゆえに大人も十分に楽しめる作品であると断言する。
『ガールズ&パンツァー 最終章』第4話 2023年10月6日(金) 劇場上映
大人にこそ見て欲しいアニメ『ガールズ&パンツァー』
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